LOGIN第298話 嫌いじゃないなら好きってことじゃないか!
二人は三十分ほど歩き回ったが、まだ荘園の半分しか見ていなかった。
蓮はそろそろ切り上げたくなり、帰ろうと促した。
「もう十分歩いただろ。俺も疲れたし、少し休んでからまた見ればいい。とりあえず戻ろう!」
表向きは平然としていたが、内心で何を考えているのかは、本人にしか分からない。
美月もそろそろいい頃だと思い、うなずいた。
「ええ!」
蓮はその返事を聞いただけで、内心嬉しくてたまらなかった。
「よし、じゃあ行こう!」
二人は歩いている間ずっと手をつないでいた。帰るときも、蓮はその手を離そうとしなかった。
二階に上がる
第298話 嫌いじゃないなら好きってことじゃないか!二人は三十分ほど歩き回ったが、まだ荘園の半分しか見ていなかった。蓮はそろそろ切り上げたくなり、帰ろうと促した。「もう十分歩いただろ。俺も疲れたし、少し休んでからまた見ればいい。とりあえず戻ろう!」表向きは平然としていたが、内心で何を考えているのかは、本人にしか分からない。美月もそろそろいい頃だと思い、うなずいた。「ええ!」蓮はその返事を聞いただけで、内心嬉しくてたまらなかった。「よし、じゃあ行こう!」二人は歩いている間ずっと手をつないでいた。帰るときも、蓮はその手を離そうとしなかった。二階に上がると、蓮はあることを思い出し、意気揚々と口を開いた。「まずは書斎に行こう!」その言葉を聞いた美月は、彼が何をしようとしているのかすぐに察した。「別に、サインしなくてもいいんじゃない? 誰の名義になっているかなんて、そんなに大事なことかしら?」――もう、こんなにたくさんもらってるのに。これ以上もらうのは、さすがにちょっと……蓮はその言葉を聞いた途端、目の輝きを失った。「お前、そんなに俺のことが嫌いなのか?」美月は困惑したように彼を見つめた。「……どうしてそうなるの? あなたのことが嫌いだったら、そもそもこうして一緒にいるわけないでしょう?」
第297話 二人きりの世界を邪魔されてたまるか「これ、食べてみろ。なかなかうまいぞ」蓮はおかずを一つ、美月の皿に取り分けた。「ここの料理人は本国から呼び寄せたんだ。何でも作れるぞ」「見た目もきれいだし、すごくおいしそうね」美月は言った。蓮はその言葉を聞くと、すぐに促した。「だったら、早く食べてみろよ」美月はうなずき、一口かじった。途端に目がぱっと輝いた。「これ、本当においしいわ!」美月が心から気に入った様子を見て、蓮まで嬉しくなった。――一流の料理人を呼んできて正解だったな。「気に入ったなら、もっと食べろよ。ほかにもいろいろあるぞ。これもなかなかうまいから、食べてみろ。それに、デザートはこっちで雇ったパティシエに作らせたんだ。これもきっと気に入るはずだ」――気に入ったものは、何でも食べさせてやりたい。「うん、自分で取るから、そんなにたくさん取らなくていいわ。あなたも早く食べて」蓮は内心、幸せでたまらなかった。――やっぱり、俺のことを気遣ってくれてるんだな。「食事が終わったら、まず少し休もう。飛行機で来たんだから、疲れただろ? 時差も調整しないとな。目が覚めたら、外に食べに行ってもいいし、ここで食べてもいいし……」「今日はここで食べましょう。あちこち出歩きたくないわ」美月は、その「休もう」という部分だけ、意識して聞
第296話 女にうつつを抜かして、友達も捨てやがって美月は蓮の視線とぶつかり、思わず頬をほんのり赤く染めた。……別に照れているわけではない。ただ、この男の目があまりにも露骨で、何を考えているのか丸分かりなのだ。「なあ……」――ヤバい、このままじゃ。美月は慌てて口を挟んだ。「お腹が空いたわ。ご飯にしましょう」その一言で、蓮のよこしまな考えはあっという間に打ち砕かれた。彼は深く息を吸い、胸の中で騒ぎ立てる欲望を、もう一度必死に押さえ込んだ。「行こう。まずは飯だ」やはり、人間と動物には根本的な違いがある。人間には、自分を律する理性があるのだ。もちろん蓮としては、今この瞬間だけは本気で動物になりたいと思っていたのだが。美月はふと思い出したように言った。「まだ家に電話していなかったわ。先に電話しておくね……」蓮はすぐに答えた。「もう連絡しておいた。食べてから電話すればいい」美月は少し考え、それもそうだと思った。二人は連れ立って階下へ降りていった。翔太はまだ帰っておらず、リビングのソファに座っていた。美月の姿を見ると、やはり一瞬、目を奪われた。だが、蓮の鋭い視線がすぐさま飛んできた。
第295話 嫁に金を使わないで、何のために稼ぐんだ?蓮はすでに美月のそばまで来ていた。彼女の問いにも、気にした様子もなく答えた。「多いか? 全然そんなことないぞ」――まだまだだ。時間さえあれば、デパートを何軒も空っぽにするくらい買い込んでやるのに。それに、ここにあるのは寝室のクローゼットに収まっている分だけだ。廊下を挟んだ向かい側には、さらに大きなクローゼットがある。あっちは彼女にゆっくり探検させてやろう。美月は、部屋いっぱいに並んだ服や靴、帽子、ジュエリーの数々を眺めた。それから蓮の「全然多くない」という言葉を聞いて、呆れてものも言えなかった。――ここに来ることなんて、そう頻繁にはない。それなのに、こんなに大量のものを買い込んで置いておくなんて、もったいないんじゃないかしら。そう思ったことを、そのまま口にした。蓮はすぐに反論した。「お前にプレゼントするものが、どうして無駄なんだ? 一つだって無駄なものなんかないぞ」――たとえ着てくれなくても、そこにあるだけで俺の心は満たされるんだ。美月は言葉を失った。「……」蓮は楽しそうに服を物色し、一着のドレスを選び出した。淡いピンクのロングドレスだった。「今日はこれにしたらどうだ? なかなか似合うと思うぞ」美月は差し出されたドレスに目を向けた。淡いピンクのロングドレスで、デザインもシンプルながら上品だった。
第294話 嫁は俺のことが好きなのか? それとも好きじゃないのか?しばらくして、ようやく我に返った美月は、首を横に振った。「それはいいわ。こっちにはそんなに頻繁に来るわけでもないし……そこまでする必要はないわ」――結婚しただけで、あっという間に大富豪の仲間入りってわけ。正直、意味が分からない。なんでこの人、こんなに何かと贈りたがるのかしら。本当にお金があり余って、使い道に困ってるのかしら。蓮は美月が受け取ろうとしないと知ると、たちまち焦り始めた。「もしかして、まだ俺のことを好きになってくれてないのか?」美月は言葉に詰まった。「……」――何を言い出すのよ。一方、翔太は目を大きく見開き、二人を食い入るように見つめていた。その目には、ゴシップ好きの血が騒いでいるのがありありと表れていた。「正直に言ってくれ。俺のこと、嫌いなのか?」蓮はなおもしつこく食い下がった。美月がなかなか答えてくれないせいで、さっきまでの上機嫌は一瞬にして吹き飛んでしまった。胸の中が苦いもので満たされたような気分だった。その顔からは、すっかり生気が失われていた。さっきまで笑みをたたえていた目も、今は輝きを失って、しぼんでいた。美月は何も言えなかった。「……」――どう答えればいいのよ。ここで好きだなんて言えるわけないでしょう。
第293話 大きなサプライズ美月は、まだ自分を抱きしめている蓮を押し返した。「もう降りるわよ」彼女の顔は桃の花のようにほんのりと赤く染まっていた。唇もいつも以上にふっくらと赤くなっている。その姿を目にした途端、蓮の眼差しが一段と熱を帯びた。美月は、彼が何を考えているのかすぐに察した。またうっとりして動かなくなるのを防ごうと、慌てて手を伸ばし、彼の腰のあたりを軽くつねった。もちろん、蓮は痛くもなんともない。だが、美月が珍しくこんなことをするものだから、ここはひとつ、痛がってみせることにした。「痛っ! 痛いって!」わざとらしく声を上げる蓮を見て、美月は呆れた。……芝居が下手すぎるでしょ。彼女はじろりと彼を睨んだ。「もういいから、降りるわよ」後部座席で長居しすぎた。蓮も、何事にもほどほどというものがあるのは分かっていた。――これ以上ふざけていたら、本当に怒らせてしまうから。うちの嫁は、そういうことを気にするたちなのだ。そこで、彼はすぐに機嫌を取るように答えた。「分かった。今すぐ降りるよ」素早くドアを開けて先に車を降りると、蓮は少し身をかがめ、手を差し出した。「手を貸すよ」美月は差し出された手を見て、ほんの一瞬ためらった。







